旬の特集
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文書作成日:2016/09/22



 今年3月に改正された育児・介護休業法と男女雇用機会均等法が来年1月1日に施行となります。この改正では、新たに妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについて防止措置を講じることが企業に求められています。この妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントは、「マタニティハラスメント」(以下、「マタハラ」という)と呼ばれ、最高裁判決が出たこともあり、ここ数年大きな関心を浴びています。また女性の活躍に注目が集まっていることを考えると、マタハラ防止措置は企業にとって、確実に行うべき内容といえます。そのため、先行して義務付けられているセクシュアルハラスメントの防止措置とともにその体制を確認・整備が求められます。


 これまでも男女雇用機会均等法や育児・介護休業法により、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止や、育児休業・介護休業等を理由とする不利益取扱いの禁止が定められていました。今回の改正では、これらの不利益取扱いの禁止に加え、妊娠・出産等に関する言動により妊娠・出産等をした女性従業員の就業環境を害することがないよう防止措置を講じることや育児・介護休業等に関する言動により育児・介護休業者等の就業環境を害することがないよう防止措置を講じることが求められるようになりました。


 マタハラは「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」に分類されています。

(1)制度等の利用への嫌がらせ型
 制度等の利用への嫌がらせ型とは、従業員が法律で利用が認められている以下の制度や措置等を利用したり、利用の請求をしたり、利用の請求に関する相談をした場合に、上司がその従業員に対し、解雇を始めとした不利益な取扱いを行うことを指しています。また、制度の利用に関し、上司のみならず、同僚が繰り返しまたは継続的に、請求等をしないように言うことも含まれています。

[対象となる制度又は措置(男女雇用機会均等法が対象とする制度又は措置)]
・妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(母性健康管理措置)
・坑内業務の就業制限及び危険有害業務の就業制限
・産前休業
・軽易な業務への転換
・変形労働時間制での法定労働時間を超える労働時間の制限、時間外労働及び休日労働の制限並びに深夜業の制限
・育児時間

[対象となる制度又は措置(育児・介護休業法が対象とする制度又は措置)]
・育児休業
・介護休業
・子の看護休暇
・介護休暇
・所定外労働の制限
・時間外労働の制限
・深夜業の制限
・育児のための所定労働時間の短縮措置
・始業時刻変更等の措置
・介護のための所定労働時間の短縮等の措置

 典型的な例としては、「産前休業の取得を上司に相談したところ、休みを取るなら辞めてもらうと言われた」というものや「育児休業の取得について上司に相談したところ、男のくせに育児休業を取るなんてあり得ないと言われ、取得をあきらめざるを得ない状況になっている」といったものが挙げられます。

(2)状態への嫌がらせ型
 状態への嫌がらせ型とは、女性従業員が妊娠等したことなど、以下の事由により、上司がその女性従業員に対し、解雇を始めとした不利益な取扱いを行うことを指します。また、女性従業員が妊娠等したことにより、上司のみならず同僚がその女性従業員に対し、繰り返し又は継続的に嫌がらせ等を行うことも含まれます。

[対象となる事由]
・妊娠したこと
・出産したこと
・坑内業務の就業制限若しくは危険有害業務の就業制限の規定により業務に就くことができないこと又はこれらの業務に従事しなかったこと
・産後の就業制限の規定により就業できず、又は産後休業をしたこと
・妊娠又は出産に起因する症状により労務の提供ができないこと若しくはできなかったこと又は労働能率が低下したこと
 ※「妊娠又は出産に起因する症状」とは、つわり、妊娠悪阻、切迫流産、出産後の回復不全等、妊娠又は出産をしたことに起因して妊産婦に生じる症状をいいます。

 典型的な例として、上司に妊娠を報告したところ、「他の人を雇うので早めに辞めてもらうしかないと言われた」というものが挙げられます。

 一般的には、妊娠・出産・育児休業等により一時的に働くことに制約が生じることから、少なからず周りの従業員に業務上の影響が出るものです。そのため、どちらもハラスメントの行為者となりうる人に同僚が含まれることから、企業としてはマタハラ対策を管理職向けのみに行うのではなく、広く従業員を対象にすることが求められます。


 マタハラ防止措置のポイントは、以下の5つとなります。

a.事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
b.相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
c.職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
d.職場における妊娠・出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
e.a.〜d.と併せて講ずべき措置

 基本的な流れは、セクハラ防止措置と同様となっていますが、d.の「職場における妊娠・出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置」はマタハラ独自のものであり、業務体制の整備など、事業主や妊娠等した従業員その他の従業員の実情に応じ、必要な措置を講ずることが求められます。

 a.からe.のいずれもが重要な項目にはなりますが、マタハラが発生しないようにするためのa.の措置と、マタハラが発生したときに適切な対応ができるためのb.の措置は特に重要になります。具体的には、まずはa.において、マタハラがあってはならない旨の方針を示すとともに、マタハラを行った者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定しておく必要があります。そして、b.において、あらかじめ相談窓口を設置した上で、広く相談対応を行うことを周知しておきましょう。

 マタハラがセクハラやパワーハラスメント等の他のハラスメントと複合的に生じることが想定されるため、ハラスメント相談窓口を一元的に受けられる体制の整備が勧められています。現状の体制を改めて見直すとともに、何が効果的な対策なのかを検討して整備を進めましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「雇用における男女の均等な機会と待遇の確保のために」

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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